ヴァラナシの街に別れを告げ最終目的地"アグラ"へ向かう列車 "マルダールエクスプレス"
に乗り込んでから数時間…。
…
俺の腹は"限界の先"に辿り着いていた
インドに到着して間もない頃は警戒に警戒を重ね、ありとあらゆるインドの"食物"を拒絶してきたのだが2日、3日と過ぎていくうちに一歩、また一歩と警戒心は氷の様に溶け、 ヴァラナシの街を出た今ではインドの全ての"食物"をマザー・テレサの如く受け入れてしまっていたのだ。
やっちまった。本当にやっちまった。
とにもかくにもぶっ壊してしまったものは仕方がない。出しきるしかないのだ。
俺はその後4時間ほど
寝台シート→ 便所 →寝台シート →便所 →寝台シート→………
秋元さんでもきっと耐えられぬほどの"ヘビーローテーション"を繰り返し続けた。
出すものも全て出しきり気持ち的には20㎏程の減量に成功した頃、俺のシートに一人のメガネをかけた華奢な若者が突然腰掛けてきた。
メガネの若造
"やぁ、どこまで行くんだ?"
僕
"アグラだ"
メガネの若造
"おー!アグラか!あそこはいーぞ!それじゃあ着くまでなんか話そうよ!"
それじゃあの意味がわからん…
俺は正直、純粋にとてもイヤだったし、20㎏の減量後の体力では"力石徹"←明日のジョーを見てください
の様にこいつに喋り殺されるのではないだろうか?そう思ったのだが追い払う体力もなかったので適当に相槌を打ち続けていた。
しばらく適当に相槌を打ち続けていると若造がこんな事を言い出した。
若造
"ねえ?なんか体調が悪そうだよ?大丈夫かい?"
(半分はお前が原因だ)
僕
"いや、大丈夫だ。食い物にあたっただけだよ。とりあえず上からも下からも出すもんは全部出しきったはずだしもう平気だよ"
しばらくジー…っと俺の顔を覗きこんだかと思うと突然シートから立ち上がりダッシュでどこかへ消えていく彼。
(なんなんだあいつ?なんか俺悪い事したっけ?意味わかんねー奴だ。まあいい、原因はなんだかしらんが厄介者がどこかへ遠ざかってくれたのだ。)
と、思っていると…
車両のハジッコから物凄い笑顔でこちらにダッシュで戻ってきたのだ
(え?なに?え?なに?)
若造
"やはり体調が悪いのは良くないよ!コレを食べて!"
差し出された彼の右手には小さなリンゴがあって気を使っているのか念入りにタオルでゴシゴシと拭いたあと俺に手渡してくれたのだ。
若造
"水で洗うとまたお腹を壊すかもしれないからしっかりとタオルで拭いたから大丈夫だよ!さあ食べて元気をだして!"
俺は泣きそうだった。
ごくまれにインドでも現れるガリガリ君の当たり棒くらいレアな種族
"タダのいい奴"
が目の前にいる。
だが1つだけ言わせてくれ。そのタオル、ペンキまみれだよね?何をこれまでに拭いてきたんだい?
まーいーさ
そして俺は、彼を心の底から邪魔者扱いしどっかに消えてくれと願ってしまったその思いを心の底から恥じ感謝の気持ちと共にリンゴを頬張った。
若造
"うまいだろ?あ!僕はこの駅で降りるんだ!またお話ししようね!サヨナラ"
俺
"とても旨いよ。どうもありがとう。サヨナラ"
こうして、あまりにも親切だった若者は元気よく列車から降りていった。
それから数時間後、列車は遂に最後の目的地"アグラ"の街に到着した。
※それから数時間後、更なる腹痛に襲われたことは"若造"には内緒だ
続く
自己紹介
- NaturalCafe ROUTE99
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